第2章 寒月
2時限目の授業を終えると、生徒たちが保健室にいけとうるさい。
どうやら血が止まりきって居なかったようで、絆創膏にでかい血のシミがあるようだ。
幸い3時限目は授業が入っていなかったから、職員室に寄って大野宅にもう一度電話を掛けてから、保健室に行こう。
そう思って職員室に戻っている途中で、相葉先生に捕まった。
「はい、確保~」
俺の腕を掴むと、強引に保健室方面に引きずられていく。
「ちょ、待って」
「生徒がね~保健室駆け込んできたのよ~チェリーが血まみれだって」
「はあっ!?チェリーって俺のこと!?」
「あんた以外いないっしょ?」
「俺は童貞じゃねえっ」
「はあ?童貞じゃないって威張れる年だと思ってんの?」
「うっ…」
高校まで男子校で過ごした俺は、大学のときに念願の彼女ができて童貞を捨てることができたが…(大学は共学だった)
えっちが下手だと、手酷く振られて…
しかしその後、俺が中等部からの持ち上がり組だとわかると、手のひらを返したように媚びを売ってきた。
『サクショーんち金持ちなんでしょお?もう一回、付き合ってやってもいいよ?』
それ以来、男女の恋愛はトラウマになっている。
「…なんか、痛いとこ突いた?」
「いえ…別に…」
ズルズル引きずられながら、今日は絶対仏滅だと思った。