第7章 繊月
「俺…キスしてくれたら、きっとぐっすり寝れる…」
すごい心細そうな目で…すごい寂しそうな声で…
ぎゅっと俺の服を掴んで離さない。
心臓が物凄い勢いで動き出した。
やばい…これは、やばい…
大野の顔を見てたら、駄目だと思って目を逸したけど。
でも、大野は俺を離してくれない。
「……だめ……?」
駄目…に決まってんだろ。
なのに…俺は、大野の上から退くこともできなくて。
動けなくて。
「…嫌…なの…?」
嫌じゃない
嫌なわけない
ガバっと顔を上げた。
泣きそうな大野と目が合った。
「嫌じゃない」
「先生…」
「嫌じゃないのが、問題なんだ…」
「え…?」
そのまま力が抜けて。
さっき飲んだ痛み止めが効いてきたのか、眠くて。
体の力が抜けた。
ゆっくりと大野の胸板に、頭を載せた。
大野の体は温かくて。
シャツ越しに感じる体温が気持ちよくて。
そのまま眠ってしまいそうだった。
正直…
大野とあんなことになって
後悔がないとは言えない
あれはクスリのせいだったって、必死に自分に言い聞かせて納得してた。
だけど…
大野を見るたびに、心臓が高鳴るのはなぜだ?
なんで大野の体温を感じていると、安らぐ?
大野は男だぞ…?
大野は俺の生徒なんだぞ…?