第7章 繊月
「松本くんのお家に乗り込んでね。3人で会いに行ったんだよね」
「大変だったが…信用してもらえてよかった…」
「え?松本の家…?」
「ああ…元気になったら、お礼言いに行こうな?松本のお父さんに車出してもらったんだ」
「えっ…お父さんに…」
養父だって言ってた。
俺、そんな人にまで迷惑かけてたんだ…
「…なんか…」
「え?」
「すごく…申し訳なくなってきた…」
「…何いってんだよ…」
先生が笑いながら、またマグカップのお茶を飲んだ。
「申し訳ないって思うなら、これから頑張って高校生するんだな」
「高校生…」
「そう。勉強頑張って、ちゃんとした大人になること。それがおまえのこれからできることだよ」
「そ、そ。みんな、大野くんにペコペコ謝られるより、それが一番うれしいと思うよ?」
「でも…」
「まあ、今回のお礼は言いに行こうな?」
にっこり笑ってくれたから。
頷いて。
何度も頷いて。
沢山の人が…
俺の傍に居たのに…
俺、なんにもわかってなかった
一人だと思いこんで
誰にもなんにも言わないで
なのに
周りの人は、俺のこと…
見ててくれたんだ…
「勉強は俺がきっちりと見てやるからな?」
「え」
「何だその顔は」
「…がんばる…」
「適当でいいからね~」
「ちょっと相葉先生は黙ってて!」