第7章 繊月
小さな土鍋…
母さん…
まだ俺が…あの人達の子供だった時の、小さな思い出…
父さん…
「ありがとうございました…」
「大野…」
「本当に…ありがとうございました…」
泣きそうになった。
あの頃に戻れるなんて思ってない。
でも、あの頃の思い出の中の父さんも母さんも
俺を愛していてくれたから…
ちゃんと息子として、愛してくれていたと思うから…
「お父さんに…会うか…?」
でも…それは…
過去の話
「ううん…いい…しばらく、会いたくない…」
「そうか……」
櫻井先生も、なにか考え込むように俯いた。
「ゆっくり…時間を掛けよう。大野、考える時間はいっぱいあるから…」
「はい……」
多分、父さんは変わらない。
母さんは…わかんないけど…
でも俺も、もうあの頃の俺じゃない。
手も足も…身長も、あの頃より大きくなった。
もう、小さな子供じゃない
「父さんに文句言えるくらいの語彙力がついたら、会います」
「え?」
先生がびっくりした顔で俺を見た。
「なんも言い返せないくらい、こてんぱんにしてやる」
「ぶっ…くくく…いいじゃん。いいよ。大野くん…それ、すごく良い目標だと思うよ?」
相葉先生が膝を叩いて笑った。