第2章 寒月
「智くんが戻られたら、ご連絡ください。…明日も…私は校門当番なんで…もし、大丈夫なようなら、ゆっくりで良いから登校するようお伝えください…」
おざなりの挨拶を吹き込んで、電話を切った。
「はぁ…」
大口の寄付家庭…
出席日数は今の所、足りていない。
まだ5月だ。
だからこれから真面目に出席すれば、十分に取り返せる日数ではある。
ただ…この程度なら、教頭は目こぼしするだろう。
そんな大人の懐具合まで読んでいるかのような、大野の登校日数。
2限目の準備をしながら、ため息が止まらない。
ぽてっと机に何かケースが飛んできた。
「…ミンティア…?」
飛んできた方向を見ると、澄岡さんがこちらを見ていた。
「ため息が多いと幸福が逃げていきます。気分転換を」
「あ…すいません、どうも…」
一粒取り出して、カリッと噛んでみた。
爽やかなミントの味が口の中に広がる。
2限目の開始を知らせるチャイムが鳴り、慌てて職員室を飛び出した。
「す、澄岡さんこれありがとうございました!一粒いただきました!」
「はい、いってらっしゃい」
バタバタ走る俺は、額の絆創膏に血が滲んでいるのに気づかなかった。