第7章 繊月
「ああ…あの背の低い…先輩…」
「うん。仁科と一緒に助けたんだってな?大野」
「いや…助けたっていうか…ちょっと…」
「ん?」
まあ、結果的に助けたことになるのかなあ…
「…俺が大野の家に行った日に起こったことなんだが…また五関が殴られててな。そこに仁科が助けに入ったんだ」
「カズヤが…だから、名誉の負傷って…」
「そう。そこ覚えてるんだね。カズヤは助けに入って、巻き込まれて殴られちゃってね。それで保健室に来てたんだよ」
「いじめをしていた3年のことで、いろいろあってな。保健室で話しているうちに、大野の話になったんだ」
「え?なんで…」
「五関、感謝してたぞ。お礼が言いたくて、おまえのこと探してたみたいだし」
「お礼?そんな…お礼言われるようなことなんて…」
「おまえはそうかもしれないがな。五関は感謝してた」
「そう…ですか…」
櫻井先生は少し笑って、それからマグカップのお茶を飲んだ。
「だから、おまえが行方不明になったって、仁科にも知られてしまって…」
「うん…」
「おまえのお父さんと約束したんだ。表沙汰にはしないって」
「え…?学校には知らせないってこと?」
「そうだ。その代わり、お母さんをちゃんと病院に入れるって約束してもらったんだよ」