第7章 繊月
「い…嫌じゃないっ…」
あんまり悲しそうな顔するもんだから、思わず否定した。
「そっかぁ…よかった…」
また、心底安心したような顔をするから、怒るに怒れなかった。
ぽふっと頭を枕に戻して。
嬉しそうに目を閉じた。
まだ…クスリ残ってんのか…?
でも、大野に興奮した様子は見られない…
一体…今のって…キス…だよな…?
なんで…
「…大野…あの…」
「トイレ、行きたい」
「あ、ああ…立てるか?」
慌てて、スタンドが立っている方に回って、点滴が左腕に刺さっているから、動きづらそうな体を起こすのを手伝った。
床に足をついて、立ち上がった大野は少しふらついた。
「おっと…」
慌ててその細い体を抱きとめた。
「大丈夫か…?」
「うん…」
しばらく大野は俺の胸に頭を凭れかけさせたままでいた。
「大野…?」
歩けないのかなと思って背中に腕を回すと、大野は俺の体に右腕を回した。
抱き合うような格好になって。
大野の体温がダイレクトに伝わってきて。
どうしていいかわからなくなった。
「…先生…」
大野のかすれた声が聞こえて。
「ん…?」
返事をしたら、大野が顔を上げた。
じっと俺を見上げる大野の顔が。
だんだん近づいてきて。
また、俺たちはキスをした