第7章 繊月
その顔は…
本当に安心っていうか…心底ほっとした顔だった。
嬉しくて…
左手で手を握りしめたまま、右手で大野の頬に触れた。
頬は、手と違って温かくて。
さわり心地のいい頬の皮膚を、手のひらで包んだまま親指で擦った。
「先生…」
「…なんか、して欲しいことはあるか…?」
「ううん…大丈夫…」
「そうか。なんでも言えよ…?今日は休みだし…」
「うん…」
握ってた手が解かれて。
その手が俺の頭に触れた。
「たんこぶ…どこにできたの…?」
「…どこでもいいだろ…?」
「よくない」
大野の目が真剣になった。
「俺…先生に怪我させてばっかり…」
「そんなこと…ないぞ…?ほとんど自業自得だから…」
「ぶっ…」
少し笑うと、俺の髪を撫でた。
「ごめんね…?」
「いいから…謝んなって…」
なんだか大野の手が気持ちよくて…
そのままマットレスに頭を預けて目を閉じた。
メガネのフレームがミシッと音を立てたが気にしない。
大野の頬を包んでいた手は胸板に置いて、大野の鼓動と体温が伝わってきて。
なんだか、安心した。
「先生……」
「ん…?」
もそっと大野が動いて。
なにしてんだろって思って顔を上げたら…
「っ…!?」
唇にむにって。
ドアップで、大野の顔が見えた。
大野の唇はすぐに離れていく。
「なっ…なっ…!?」
「…嫌だった…?」