第2章 寒月
side S
『ただいま留守にしております。御用の方はピーッという…』
いつも通りの留守電だった。
1限が終わるまで、連絡できなくてヤキモキしてた。
チャイムと同時に受け持っていた教室を飛び出して、職員室に戻った。
緊急連絡先のファイルを出すと、慌てて大野の自宅に電話をした。
大野、出てくれ
頼むから、家に帰っていてくれ
そう、思いながら。
しかし、残念ながら聞こえてきたのは、いつも通りの機械の音声だった。
「あ~もしもし?智くんの担任の櫻井ですけど…」
なんか、どう言っていいかわからなくなる。
もしかして甲状腺異常で…ダルいのかもしれないっていう相葉先生の言葉が蘇ってきた。
俺が怒らせましたという仁科のヘラヘラした顔が浮かんでくる。
なんで…なんでだよ大野
なんで俺に言えない
「あー…智くんが気分が悪くなったということで早退されたようです。行き違いがあって、私は話すことができませんでしたが、無事に帰宅されているでしょうか?」
ポケットティッシュを差し出してきた、大野の顔が浮かんだ。
絶対に、あいつは…
ズル休みするようなやつじゃない、と思う。
なにか、ある