第7章 繊月
部屋の奥の窓のカーテンが開いたままになっていたから、閉めて。
遮光カーテンじゃないから、あんまり暗くはならないけど、明るいより眠れるだろう。
ベッドの方を振り返ると、大野が目を開けてた。
…器用だな…目を開けたまま寝るなんて…
髪が少し伸びたな…
いつも学校に来る時は、前髪を上げていたが。
今はサラサラの前髪が、額にかかって。
目に入りそうになってる。
なんて思って、じっと大野の顔を見ていた。
「…先生?」
「わっ…あああああああっ…」
起きてたっ…起きてたじゃないかっ…
バカ!俺のバカ!
「ご、ごめん。起こしたか?」
「ううん…起きてた…」
「そ、そうか!うん!起きてろ!暇なら、漫画とか読むか?」
「ううん…いい…あの、先生…?」
「ん?なんだ!?トイレか?」
「ううん…」
「なんだ?遠慮なく言ってみろ!」
「ケツ、痛くない?」
「け……」
ケツの穴…痛い…
「…痛いんだ…ごめん…ごめんね…?」
「い、いや…」
なんでわかったんだ…
そりゃ…あんなとこに、あんなものぶちこまれて、痛くないわけないし…
「気にすんな…な?」
「でも…」
「こんなの薬塗っておけば大丈夫だ!」
大野の右手が、俺に向かって差し出された。
また、握って…欲しいのかな…
近寄って、ベッドの横の絨毯の上に座ると手を握った。
大野の手は少しひんやりしてて。
温めるように握り込むと、少しはにかんだ顔をして。