第7章 繊月
「はぁぁぁぁ…」
思い出してしまった…
考えないようにしてたのに…
昨日の…風呂場の…アレ…
「うぅぅぅぅ…」
やったことに後悔はない。
大野だってクスリで取り乱してたんだ。
なのに…
「なんで、キスしちゃったんだろ…」
それも自分から…
何回も…何回も…
「あああああああああああ…」
「…なにしてんの…?」
「うわっビビったっ…」
「玄関先で唸ってるから何かと思ったんですけど…」
相葉先生がお玉を持ったまま、玄関先に立っていた。
玄関の三和土でうずくまって唸っている俺を、異星人を見るような目で見ている。
「さーせん…」
「お味噌とかないの?」
「あー…インスタントのしか…」
「よかった。それ出して。味付けに使うから」
「あ、ハイ…」
とぼとぼ、リビングに向かった。
「あの冷蔵庫さ、飲み物専用なの?あんなでっかいのに」
「…引っ越した当初は、自炊しようと頑張ったんですが…俺、壊滅的に料理のセンスなくて…」
「なるほど…不器用そうだもんね」
「うぐ…」
リビングに入ると、コトコトと何かが煮える音がしていた。
左手のキッチンの方を見ると、コンロに乗った鍋から温かい湯気が立ち上っている。