第7章 繊月
そういや、相葉先生が来たとき、買い物袋下げてたな…
「なにからなにまで…」
「いいって。ここまで付き合ったら、とことん面倒見るよ」
そういって、リビングの奥にあるキッチンに顔を向けた。
「米くらいあるでしょ?」
「あ、ハイ…チンご飯なら…」
キッチンの棚から飯のパックを出していると、笹野先生がリビングに顔を出した。
「翔くん、済んだよ」
「あ…すいません!ありがとうございました!」
「いいんだって」
「もしかして、寝てないんじゃないですか?」
昨日、深夜に向かった先の患者さんは、旅立ったとのことだった。
その関係で、先程までバタバタとしていたって。
「ああ?まあ、勤務医だった頃に比べたら、このくらいなあ…」
そう言いながら、ゴキゴキと肩を鳴らした。
ソファに座ってもらって、これから帰られるというから、コーヒーを出した。
「ああ…これから家に帰ったら、一眠りするから。生徒さんになんかあったら、電話に着信を残しておいてくれ」
「わかりました。本当になんと言っていいか…ありがとうございましたっ…」
ラグの上に正座をして、頭を下げた。
「それよりも、腹の調子が悪いということだが…?」
「あ、ええ…なんかどうも…」
「下しているのかね?」
「出してもなんだか渋っています」
「そうか…何か悪いものでも食べたかな?」
「いやあ…ほとんど昨日から食ってないので…」
「ふむ…」
先生は俺を手招きすると、そっと腹に手を当てた。
「なんだ。えらい腹が硬いな…どれ…」
そう言って、下の方をぐいっと押した。