第6章 幻月
「先生…」
「ん?」
「あの…」
「なんだ?」
「痛い…?その…」
ケツ痛いかなんて聞けない。
「ああ…額?もう大丈夫だぞ?」
「あ!翔くん。その傷、消毒してやるから。来なさい」
「えっ」
「話を聞くと、抜糸してから病院に行ってないだろう?いかんぞ。消毒するから、来なさい」
「え。その…」
「あ、じゃあ消毒なら僕がやっておきますんで」
相葉先生がにこにこと笹野先生に向かって手を挙げた。
「おお。じゃあ頼みましたよ。保健の先生」
「はーい」
「いや、あの相葉先生…」
「いいからいいから」
相葉先生が笑いながら先生を後ろから羽交い締めにして連れて行った。
「ちょ、ちょおおお…」
笹野先生は、もう一度点滴のダイヤルをいじりながら、またカッカッカと笑った。
「君は水分をいっぱい摂って、とにかくおしっこをいっぱいだしなさい。ドラッグを体から抜いたら、多分大丈夫だと思う。あとはぐっすり眠って。ご飯も普通に食べていいから。体を回復させなさい」
「はい…」
じっと俺の目を覗き込んで。
笹野先生は、笑った。
「よおし。いい顔をしておる。若いから、回復も早いだろう。もしも具合が悪くなったら、すぐに翔くん…いや、櫻井先生に言うんだぞ?回診に来るから」