第6章 幻月
「…気分はどうだい?気持ち悪いとか、頭が痛いとか…」
「あ…大丈夫です…」
「そうかい。そりゃよかった…」
管の途中についてるダイヤルみたいなのをいじりながら、笹野先生はカッカッカと笑った。
「風呂に入ったのがよかったようだなあ」
「あっ…」
俺…そうだ
先生になんてこと…
「翔くんがたんこぶを作ったのは傑作だったな」
「え?」
「君を抱えあげようとして、風呂場の壁に頭をぶつけてしまったようだ。名誉の負傷だな」
「あ…櫻井先生は、大丈夫ですか…?」
「ああ。あの程度、唾つけときゃ治ろう。大丈夫だ」
いや…そうじゃなくて…
「おーい!翔くん。生徒さんの目が覚めたぞ!」
どう言っていいかわかんなくなってたら、笹野先生は寝室のドアを開けて外に向かって叫んでた。
「はーい」
パタパタとスリッパの音が聞こえてきて。
ドアから櫻井先生が入ってきた。
後ろから、相葉先生も入ってきた。
「大野!」
先生はスタンドのある方とは逆側に回ってきて、俺の顔を覗き込んだ。
相葉先生も後ろから、にこにこしながら手を振った。
「気分はいいようだ。風呂がいい効果を出したようだな」
「よかったぁ…」
先生は安心した顔をして、俺の頭を撫でた。