第6章 幻月
「おまえが飲まされてた…クスリ…」
「え…?」
「あれ、感覚が凄く鋭くなるクスリで…セックスのとき使う人もいるそうだ…」
「あ…そう、なの…?」
だから、和也さん俺に飲ませたのか…
俺がその気にならないから
「…だから…気にするな…」
そう言って、また微笑んだ。
「でも…」
「いい…本当に、いいから…」
思わず、俺の頬を触っていた手を掴んだ。
「先生…」
「…ん…?」
なんで…許してくれるの
俺は許せなかったのに
なんで俺のこと許してくれるの
わかんないよ…なんで…
許せるのか…
あんな酷いことしたのに
「ごめんなさい…」
「うん…」
ぎゅっと手を握り返してくれた。
「…おまえの親も…ちゃんとそうやっておまえに謝ることが、できたらいいな…」
なんで……先生……
なんでぇ…
目の前がぼやけて
何も見えなくなった
先生の顔もみえない
「大野…?」
喉の奥から熱い塊が付き上がってきて、なんも言えない
「大野…」
先生の手が俺の手を引っ張って。
俺の体を抱きしめた。
「…ごめん…なさい…ごめんなさい…」
「うん…大丈夫…」
「ごめんなさい…」
「大丈夫だから…」