第6章 幻月
「熱い……」
どうやら上せてしまったようで。
二人で脱衣所でへたり込んだ。
しばらく無言で、座り込んでた。
体が少し冷えた頃。
なんとかバスタオルを取って、体を拭いて。
先生とふたりで支え合いながらリビングまで戻った。
冷蔵庫からペットボトルの飲み物を取り出して、リビングのラグの上に二人でダイブするみたいに倒れ込んだ。
「先生…飲める…?」
「ああ…」
少し体を起こして、ペットボトルの蓋を開けた。
でも先生は起き上がるのもだるいみたいだった。
しょうがないから、ペットボトルの水を口に含んで、じっと先生の顔を見た。
嫌かな…?
先生は俺の顔を見てたけど、わかったみたいで目を閉じた。
そのまま、さっきと変わらず赤い唇に、口をつけて。
水を流し込んだ。
ゴクリと喉が鳴ったのを確認して、また水を含んで。
何度も何度も、先生に水を飲ませた。
「もう、いいから…大野も飲め…」
「うん…」
半分になった水をごくごくと飲み干して。
空になったボトルを投げ出して、そのまま俺もラグに倒れ込んだ。
体、まだ熱くて…
でも、なんかすっきりしてる。
顔の近くにあった先生の手が、俺の頬に触れた。
先生を見ると、少し微笑んでて…
なんで…そんな顔、するの
俺、あんなことしたのに