第6章 幻月
「寒い…寒い…」
朦朧としながら震える大野を見て、笹野医師に電話してみた。
でもやっぱり出なくて…
意を決して、ベッドに潜り込んだ。
震えてる大野の体は熱くて熱くて…
着せてた服はすでにびっしょりと汗を吸い込んでいた。
「大野…」
ぎゅっと抱きしめてみたが、震えは止まらない。
何もできないまま、時間だけが過ぎていく。
ドラッグのせいなのか…
このまま汗をかかせて、体から成分を追い出す他ないんだが…こんなに苦しんでいるのに、なにもできないのがもどかしい。
「せんせぇ…」
大野が俺のシャツの裾を掴んだ。
どうにか、しなきゃ
咄嗟に布団を剥いで、ベッドから立ち上がった。
そのまま風呂場に駆け込んで、お湯を浴槽に満たす。
大野を抱えて、風呂に入れば…
汗もかくし、寒くないだろう。
笹野先生に指示された中には入っていない方法だったけど…
それに…
大野の体、あいつに…
また考えてしまいそうになって、ブンブンと頭を振った。
綺麗にしてやりたい。
また寝室に戻って、震えてる大野の体を抱き上げた。
「大野…風呂、入ろう?」
「…え…?」
「それ、薬のせいだから…汗かいて追い出しちまおう」
わざと明るく言い切って、大野を抱えて寝室を出た。