第6章 幻月
やっぱり…
相葉先生と仁科の言うとおりだった。
老医師が帰って、一時間ほど経った頃。
やっと相葉先生から連絡があった。
大野の荷物があるから、うちに来るという。
住所を教えて、タクシーで来た彼らは疲れ切っていた。
荷物を受け取って、とりあえずリビングに通して休んでもらった。
大野は眠っていたから、インスタントだがコーヒを出した。
「大野くんの様子は…?」
「今は汗をかいて…少し苦しそうです」
「そうかあ…」
ずずっとコーヒーを啜ると、一息ついてから相葉先生は話しだした。
「あの先輩ね、ラリっちゃってて…話にならなくてね。あの身長のおっきな子にずっと怒っててさ」
「あの長瀬って人ですか」
「そう。長瀬くんのほうも、何度かああいうことやったのを止めた事があるらしくて、そりゃ怒ってて…殴り合いとまではいかなかったけど、すごかったよ…」
仁科はソファの上で膝を抱えて、じっとしてる。
「仁科…疲れたか?」
「ううん…大丈夫なんだけど…」
ちらっと相葉先生の方を見た。
「ああ…そっか。言わなきゃね…」
相葉先生はマグカップを置いて、俺の方に向き直った。
「大野くん、ドラッグ飲まされてる」