第6章 幻月
ふふってカズヤは照れくさそうに笑って…
「止めに入っただけなんだけど、流れ弾喰らっちゃったよ」
和也さんにやられたわけじゃなかったんだ…
よかった
「かっこいい俺の武勇伝、聞かせてやるから…早く学校来いよ?体育祭の看板…お前いないと進まないんだから…」
よくいうよ…どうせサボって来ないくせに…
カズヤはちょっとまた泣きそうな顔に戻って…
ぎゅっと俺のほっぺたを抓った。
「…ありが、と…カズヤ…」
カズヤは泣きそうな顔のまま笑った。
「さあ。カズヤ、行くよ」
相葉先生の声がする。
ポンと胸の上に手が載せられた。
相葉先生が俺の顔を覗き込んだ。
「大野くんは、しっかりと櫻井先生のいう事聞いて、元気になること。余計なことは考えなくて良くなったからね。安心して寝るんだよ」
頷くと、相葉先生はにっこり笑って。
「あと、君の荷物は、全部あの部屋から持ってきてあるから。安心してね」
胸に置いてた手が離れていった。
「じゃあ、翔ちゃん。頑張って」
「はい。ありがとうございました」
相葉先生と櫻井先生が、話しながら部屋を出ていった。
カズヤは部屋を出ていこうとしたけど、見送る俺の目線に気づいて戻ってきた。
それから俺の目の上にそっと手を置いた。
小さな小さな声で囁いた。
「安心して…もう、全部…大丈夫だからね…」