第6章 幻月
side O
せんせー…
先生…先生…
英語研究室で、ハンカチ代わりに貸してくれたシャツの…
あの匂い…
先生の…匂いがする…
きっと、夢だ。
夢なんだ…
だって、俺…男なのに…
和也さんにヤラれちゃった
先生が助けに来てくれるわけない。
期待…しちゃいけない…
母さんが治るかもなんて…
父さんが帰ってくるかもなんて…
じいちゃんだって、生き返らなかった
だから、期待しちゃだめなんだ
いつも絶望して生きてないと、苦しい
でも…先生の匂い…
いい匂い…
安心できる…
体が、なんだか柔らかいところに寝ている。
そう感じた瞬間、体の内側が燃えるように熱くて。
なのに寒くも感じる。
腕を動かそうとしたら、左腕になんか刺さってる感じがした。
和也さんに、なんかされてる…?
「う…ぅ…」
喉、枯れて…うまく声がでない。
お酒あんなに飲まされたからかな。
でも逃げなきゃ…ここから、逃げなきゃ…
「大野…?」
先生の声がする。
「大野…!気がついたのか!?」
櫻井…先生…?
目を開けると、心配そうな先生の顔が俺のこと見下ろしてた。
先生の横にはスタンドが立ってて、点滴の袋がぶら下がってるのが見えた。
「智!」
カズヤ…?
「智…俺だよ…?わかる…?」
目線を声のする方に向けたら、そこにはカズヤと相葉先生が立っていた。
「ここ…は…?」
見たこともない部屋のベッドに、俺は寝かされてた。