第6章 幻月
本当は俺がこんなことやっちゃいけないんだろうけど…
先生はそこは多分目を瞑ってくれるつもりなんだろう。
10分ほど説明を受けて、笹野先生は急いで玄関に向かった。
「先生、本当にありがとうございました…」
「じゃあ、しっかりやるんだぞ。櫻井先生」
「えっ…あ、はい…」
「ふふ…明日、時間があったら来るから。まずは薬と酒を抜くこと。頑張るんだぞ?」
「…はい!」
今日峠になるかもしれない人が居たから、実は起きていたんだって…
すぐに連絡が取れておかしいなとは思ったんだが、なんだか申し訳なかった。
医師を見送ると、また家の中がシーンとした。
寝室に戻って、大野に変化がないのを確認してからスマホをチェックした。
まだ相葉先生や仁科からは連絡がない。
時間は深夜の1時を回ろうとしていた。
あの部屋で…何が起こっていたのか…
考えるのを、なぜか脳が拒否する。
バスローブに包まれて、奥の部屋から出てきた大野は…
裸だった。
なにを、されていたか…
していたか…
考えなきゃと思うのに、なぜかそれ以上は無理だった。
大野の額にまた、汗が浮かんでいた。
それを拭き取りながら、じっと大野の寝顔を眺めた。
涙が、出そうになった