第6章 幻月
side S
「大野…大野っ…」
「先生。病院に行きましょうか?」
松本のお父さんが心配そうに声を掛けてくれる。
「いえ…あの…」
もしも…違法薬物を投与されてるなら…
病院から通報される場合がある。
ここから問題が表面化してしまう。
そうなると、大野の将来は…
「うちの主治医に頼んでみます。なので、俺の自宅まで送ってもらってもいいでしょうか?」
「わかりました。住所を…」
「あ、はい」
住所を伝えると、松本がナビをセットした。
「大野…」
セットし終わると、松本が不安げに助手席からこちらを見た。
「ごめんな…大野…」
沈痛な顔をしている。
「松本くん、ありがとうな」
「え…」
「松本くんが教えてくれなかったら、大野を助け出すことができなかった…本当にありがとう」
大野を抱きかかえたまま、松本くんに頭を下げた。
「そんな…」
「大野が元気になったら、また遊んでくれるか?」
「あ…当たり前だろっ…そんなのっ…」
「…頼むな…」
「…ダチなんだから…中学からの…」
「ああ…」
松本のお父さんが、少し笑った。
「わ、笑うなよっ父さんっ…」
「すまん…すまん…」