第6章 幻月
ソファに寝かされて、服を着させられた。
もう体が痛くて、だるくて力が入らなかった。
その間も寝室からは争うような音が聞こえてる。
大きな物音や怒鳴り声が聞こえるたびに、体が震えた。
その度に、先生は俺のことぎゅっと抱きしめてくれて。
安心できた。
「よし、行こう。松本くん、ドア開けて」
「はい!」
服を着終わったら、また先生の腕に抱き上げられて。
俺たちは外に出た。
階段を降りて、外に出て…
砂利敷の中を歩く音がしてる。
体が熱い…
汗が吹き出してくる
「大野…?しっかりしろ…」
そんなこと言っても…先生…体に力、入らないんだ…
「父さん!車出して!」
松本の声が聞こえて、体が揺れているのを感じた。
父さん…って松本のお父さん…?
これ車…?
なんだろう…もう、訳わかんない…
「夢かなあ…」
「え?」
「夢なら、醒めなきゃいいな…」
「大野…」
カズヤや松本…それから先生たちが…
俺のこと、助けに来てくれて…
母さんが病院に入って…
父さんが…
「大野…」
ぎゅっと先生が、俺の体を抱きしめてくれた。
「夢じゃないぞ…夢なんかじゃないからな…?」
…先生…泣かないで…
俺のせいで泣いてるの…?
「大野…?大野…?」
ああ…でも…もう、眠い…
もう、寝かせて…