第6章 幻月
担任舐めんなよ…
どんな大野だって、どんな状態だって…
絶対見捨てるもんか
「じゃあ、行くから…」
松本がガレージの端っこにあるドアの前に立った。
「あれー?潤?」
びくっと声がしたほうを、全員で振り返った。
「あ…長瀬先輩…」
「なに…この人達だれ?つか、今日誰も集まってねーの?」
大柄でロン毛の男が、指先でキーホルダーをブンブン回しながら近づいてきた。
「た、助かった!!」
松本がドアノブを掴んだまま、へたり込んだ。
「んな、なんだよ…??」
「長瀬先輩!部屋の鍵、開けて!」
「お?おう…」
「中で俺の友達、ヤラれてっかもしれない…」
「え?潤のダチ?」
「今日、和也さん、みんな追い返して、中には俺のダチしかいないの…」
「なに…和也、今日キメてんの?」
「俺がさっき居た時は、まだ…」
「…わかった。開けるから、どけ」
その人は俺達のことを気にすることもなく、ドアを開けると階段をノシノシと登っていった。
階段の先には踊り場があって、その左側にはドアがあった。
そこがどうやら玄関のようだった。
鍵を差し込むと、カシャッと小さな解錠の音が聞こえて。
長瀬という人は人差し指を口に当てて、俺たちを振り返った。
そのままそーっとドアを開けると中を覗き込んだ。