第6章 幻月
ぷしゅーっと、さっきの勢いが抜けて、松本はへたり込んだ。
「なんだよ…仁科が協力してたのかよ…」
「だって、俺、智と友達だもん。俺も助けたいんだよ…」
「そっか…」
松本は俺のことを見上げた。
「…先生…大野のこと見つけ出してどうすんの?家のこと知ってんの?」
「もちろん。あのな…大野のお父さんと連絡をとって、暴力をふるっていたお母さんは病院に入れてもらったんだ」
「えっ…」
松本のお母さんの顔色が、真っ青になった。
そうだろうなあ…この人にとっては、信じられない世界のことだろうから…
「それで…お父さんは仕事もあるし、しばらくお母さんにつきっきりになるから、大野を俺の家に引き取ろうと思う」
「…ホント…?」
「ああ。お母さんが治るまで、責任持って俺の家で下宿してもらう。大野のお父さんにも許可は取ってある」
「…信じても、いいんだね…?」
じっと、真剣な目で俺を見てくる。
こいつもまた、大野のこと心配して…本当にどうにかしようって、動いてたんだ…
「約束する。施設に入れたりすることはないし、学校もそのまま通ってもらう。…だから、大野の居場所を教えてくれないか。頼む」
膝に手をついて頭を下げた。
顔を上げると、松本は戸惑った顔をしていた。
俺から目を逸らした松本は、仁科の顔を見た。
仁科はコクコクと頷いた。
「…わかった…今から、連れて行く」
そういった瞬間、松本のお母さんの体がぐらりと揺れた。