第6章 幻月
それからもお父さんとお母さんの暴走は止まらなくて。
仁科を質問攻めにしていた。
その最中に、松本は帰ってきた。
「…ただいま…」
玄関からリビングまですっ飛んできたのか、ドアを開けて息を切らしてる。
「あんた…この前の先生…」
俺を見て、驚いた顔をしてる。
「松本くん、大野が家出したんだ。どこにいるか知らないか?」
「…知ってる…」
「潤…」
お母さんが心配そうに、松本を見上げてる。
「でも…今、大野は行く場所がない。あんた知ってるだろ?大野は家で暴力を振るわれてる」
強気な感じで、俺を睨みつけてきた。
「ああ…知ってるよ。だから…」
「知ってるなら!なんで連れ戻すんだよっ!?」
「潤!ちゃんと話を聞きなさい!」
お父さんが興奮する松本を制して。
床に座るお母さんの隣に、座らせた。
「…落ち着きなさい。ちゃんとこの方たちの話を聞きなさい」
「はい…」
お母さんに背中を撫でられて、ぶすくれた顔をして松本はこっちを見た。
そして、目を丸くした。
「に、仁科!?どうして!?」
「…気づくの遅いよ…久しぶり」
「お、おう…久しぶり…」
「俺、今、大野と同じクラスなの」
「えっ…」
「この人、担任で。信用できる人だよ?」