第6章 幻月
「あの…こんなところじゃなんですから、どうぞ上がってください」
「えっ…そんな!いかにも俺たち怪しいじゃないですか!?」
「そうですよ!だめですよ!お母さん!俺たちを気軽に信用しちゃ」
「あ、あら…?」
相葉先生と俺で説教してたら、玄関から男の人がヒョイと顔を出した。
「こら~。困ってらっしゃるじゃないか」
「あなた…」
よっこらしょっと、玄関を開けて松本の養父さんと思われる男性が出てきた。
50代後半くらいだろうか。
高校生の父兄にしてはだいぶお年を召している。
だが上品で、こちらもおっとりとした雰囲気で…
松本とはやっぱり似ていなかった。
「どうも。松本潤の父です。潤と連絡を取って、すぐに戻るよう言いましたので、どうぞ上がってお待ち下さい」
「い、いえ…そんなご迷惑を…」
「家の前で待たれても困りますし」
「あ、じゃあ駅前で時間を潰してきますから!」
「でも、早いほうがいいじゃないですか?大野くんとやらを保護しなければいけないんでしょう?」
「はあ…」
「それに、そちらの仁科くんにも、学校での潤がどんなだったか、聞きたいんですよ」
「ね?上がってお待ちになって?」
そう言うと、お母さんは仁科の腕をふんわりと取った。
そのまま、うふふと笑うと仁科の手を引いて家に入っていった。
仁科は抗うことなく、家に消えていった。
「お、おーい!」