第6章 幻月
「義理の親って?」
相葉先生がまた、仁科の口にポテトを押し付けた。
「もご…だから…松本は、養子で…実の親に捨てられたっていうか…」
「ああ…そういうことかあ…」
相葉先生がちょっと暗い顔をした。
たくさん、保健室には生徒が来るって聞いたことがある。
体調が本当に悪い場合もあるけど、大概は心の調子がよくないんだって言ってたな…
そういう生徒のことを思い出したのか。
「松本は、ある人の家に入り浸ってた時期があって…」
「ある人?」
「なんか、松本の先輩らしいんだけど…詳しくは知らない。でも俺も一時期、そこに行ってた」
「え?」
「もしかして、大野…そこに居るかも…」
「仁科…その場所教えろ!」
思わず立ち上がったら、相葉先生に手で制された。
渋々座ると、相葉先生はまた仁科の口にポテトを押し付けた。
「どうしてカズヤはそこに行かなくなったの?」
「…ちょっとヤバい雰囲気だったから…」
「ヤバいって?どんな風に…?」
ちらっとまた、仁科は俺の顔を見た。
「…びっくりしないでよ…?」
「あ、ああ…」
「乱交とか普通にあったし、クスリとかもたまに…」
「おっ…教えろ!その場所を!」
また立ち上がったら、相葉先生に「メッ」て言われた。