第6章 幻月
「食いながらでいいから、この松本って子、どんな子なの…?」
相葉先生が、コーヒーを啜りながら聞いたら、仁科は少し暗い顔をした。
「もぐ…」
「あ、言いたくない系?」
「じゃないけど…まあ、あれだよ。先生たちからみたら、不良だよ」
「不良?今どき?」
ちらっと仁科が俺の顔を見た。
「うちの高等部上がれなかったのは、素行不良だから…」
「ああ…そういうことね…」
「素行不良ってどういうことなんだ?」
あんな派手な顔立ちをしているから、相当なワルなんだろうか。
「だからあ…悪いやつじゃないんだよ?だけど…その…」
「ん?なに?どういうことなの?」
相葉先生が仁科の口元に、ポテトを押し付けてる。
「もご…だからぁ…こいつも家庭が色々複雑で…」
「おお…そうなのか…」
「女の人に、癒やしを求めてる」
「女…?って…?」
「だからその…」
「青少年に言わすなよ。セックスだよ。翔ちゃん」
「せっ…」
くす、とでかい声で言いそうになって慌てて口を閉じた。
ファーストフード店で危うく、変態になるところだった。
相葉先生の顔に「童貞かよ」って書いてあって、直視できない。
「だから…学校も来ない日もあったし、家にも帰ってない日もあって…義理の親が心配して、大騒ぎになったこともあるよ?」