第6章 幻月
side S
「えっ!?松本!?」
仁科の驚いた声が響いた。
そして、食っていたハンバーガーを持ったまま、噎せだした。
「ごほっ…まつ…まつも…ごほっ…」
「ちょ、落ち着け。カズヤ」
相葉先生が、隣に座る仁科の背中を擦っている。
「し、知ってるも何も…ごほっ…」
飲み物を渡してやると、きゅーーーっと吸い込んだ。
どうやら収まったらしい。
ストローを口から離すと、ゼイゼイ言いながら俺の顔を見る。
「松本と智って仲良かったの!?ごほっ…」
「いや…俺も知らないんだが…渋谷で見かけた時は、仲良さそうに歩いてたぞ?」
「うっそ…マジか…盲点だった…」
ハンバーガーをトレイに置くと、キャップを取ってぐしゃぐしゃと頭を掻いた。
隣りに座ってる女子高生が、きゃーとかなんとか言ってる。
仁科が可愛いらしい。
「こら、家に帰れ」
「えー、おじさんうるさいんだけどー」
「これでも学校の先生なんだがな」
「もお、翔ちゃんやめなよー」
笑いながら相葉先生が止めに入る。
「そおだよ。そんなアホのことより智だよ!」
仁科が余計なことを言う。
「アホって何よー」
「往ね」
シッシと仁科が手を振ると、女子高生たちはブーブー言いながら、フロアを出ていった。
仁科怖い。