第6章 幻月
ここに…ずーっと…
「なあ…俺のものになれよ…智…」
後ろから、そっと耳元で囁かれて。
ゾッとした。
母さんと同じ匂いがするから。
「やだ…やだやだ…離して…」
必死に体をずらそうとしたら、いきなり和也さんが体の上から居なくなって。
「え…?」
驚いて見上げたけど、寝室のカーテンから少しだけ入ってくる外の灯りにぼんやりとシルエットが浮かび上がってるだけで。
表情まで読み取れなかった。
「なんだよ…冷める」
ぼそっとつぶやいたかと思ったら、またベッドに乗っかってきて。
俺の体を上向きにすると、また馬乗りになった。
俺の顔を掴むと、また口を塞がれて。
「おとなしく言うこと聞いてりゃいいんだよ…」
そう言って、口を塞いでいた手を外したかと思ったら、キスされて。
「んぐっ…」
口の中に生ぬるい液体が流し込まれた。
酒…
思わず吐き出そうとしたけど、和也さんは俺の口を塞いでしまって。
口の中が気持ち悪い。
吐き出したい。
「飲めよ」
腕、痛い…
後ろで縛られてるから、抵抗できない。
ぐっと髪の毛を掴まれて、驚いて酒を飲んでしまった。
「ぐっ…ごほっ…ごほっ…」
喉が焼けるように痛かった。