第6章 幻月
涙が出てきた。
息ができないほど、喉の奥に熱い塊があって。
大きな声も出せない。
勝手にどんどん溢れてくる涙を拭うこともできなかった。
両腕を掴まれて、何かで後ろ手に縛られた。
その手の上に、なにか柔らかいものが乗っかってきて。
「握れよ」
それが…和也さんのモノだって気づくのに時間が掛かった。
ずりずりと俺の手の平に、それは擦り付けられて…
段々、硬くなっていく。
「やだぁあ…お願い…」
酒くさい息が背中越しに漂ってきて。
和也さんが興奮して、息が荒くなってるのを感じた。
「…おまえらが嘘つくからだろ…?」
え…?
「なんで潤と付き合ってるとか嘘つくんだよ…あ?そんなに俺が信用ならないのかよ…」
「…ち、ちがう…」
「そうだろうが…下手な芝居打ちやがって…」
声が、冷たかった。
なのに、手の平に擦り付けられる和也さんは興奮してて。
どんどん大きくなっていく。
「俺にしとけって…潤より、うまいぜぇ…?」
「やだっ…違うっ…」
「なんだよ。ヤッてねえの?潤と」
「違うっ…そんなんじゃ…」
酒臭い…嫌だ…
助けて…助けて助けて…
「俺にしとけば、ここにずーっと置いてやるよ…?智…」