第5章 朔
案の定。
五関と特進の3人の問題は紛糾した。
あまりの言い分に腹の立った五関の親が、以前いじめが発覚した時の診断書があるので被害届を出すと言い出した。これ以上の話し合いは無駄と見て、弁護士も手配するという。
これには教頭がキリキリ舞いを始めて、俺たち平職員に当たるもんだから、大迷惑で…袖の下なんか貰ってるからだろ…アホだな…
仁科の診断書の写しも提出され、その写しを俺も取ってから学年主任に提出しておいた。
…事がこれだけ大きくなってきているから…退学もありだな。
仁科に”大げさに痛がっておきな”と笑った相葉先生は、やっぱり慧眼かもしれない。
学校長は臨時理事会にてこの問題を報告するため、放課後は居なかったが、教頭主導で職員会議が開かれることになった。
何を話すんだか…鼻白んでいる同僚も居た。
俺もそう思う。
しかし、悲しいかな。
俺らは教員だが、サラリーマンだ。
上司の言うことには逆らえない。
結局、なんだかよくわからない職員会議を経て、すべての業務が終わったのは夜になってからだった。
その間、大野の父親からも連絡があって。
入院中の母親の診断はしばらく先になりそうだが、双極性障害とアルコール中毒ではないだろうかということだった。
そして、大野はどこにも居ない。
見つからないということだった。