第5章 朔
「でもそんなことしたら、松本の立場が悪くなるんじゃないの…?」
「へーき。また一発掘られときゃいいでしょ」
「ちょ、ちょっと…」
「大丈夫、大丈夫。ああ見えて、和也さん、俺にはちょー甘いの。だから、大丈夫だよ」
「松本…」
「だから、潤って呼べって」
「あ。うん…」
にこにこしながら、松本がポンポンと頭を撫でてくれた。
「セックスになあ…あの人取り憑かれてて…」
「え…?」
「ま、俺もなんだけどさあ…多分、ヤッてる間は嫌なこと忘れられるからなんだろうけどさ…」
「嫌なこと…」
「俺は単純に、気持ちいいのが好きだからってのもあるんだけど…あの人の場合…違うんだよな…」
「違うって…?」
「人肌が、恋しいの。なんか、そんな感じ…」
人肌が…恋しい…?
「あの人さ…親が、政略結婚っつーの?なんかそれで、別に好きでもないのに結婚したんだって。和也さんは、どうしても跡取りが必要で、生まれたんだってさ」
「え…そう、だったんだ…」
だからお父さんとあんな冷たい感じで…
「大学卒業したら、父方のじいさんちの事業、継ぐんだって。親父さんは自分で会社興したから。だからそのための、マシーンなんだよ。和也さん…」