第5章 朔
「俺んち来てもらってもいいけど…母さんが…ちょっと色々あってさ…」
「わ、わかってるよ…そんな甘えるつもりねーよ」
「ごめんな…?力になれなくて…」
「な、何いってんだよ…ここに居させてもらえるだけでも、全然…」
「だよ…なぁ…」
ふうってため息を吐いて、松本はソファの背もたれに凭れた。
「あれ…部屋んなか、きれいになってるな…」
「あ。俺が昼間掃除したから…」
「え?智が?」
「うん…なんか、それから機嫌悪いから、俺、掃除しちゃいけなかったのかなあって…」
「ふうん…」
キョロキョロと部屋の中を見てから、俺を見た。
「惚れたかもな…」
「あ?」
「和也さん、おまえに惚れたかも…」
「ナンデスト?」
「だって、今までここに来てた女も男も、誰も掃除なんてしなかったぜ…?俺も、ゴミの片づけくらいはやったけど…こんな綺麗に掃除なんかしたことねえもん」
「ええ…?そんくらいで…?」
「案外…ああいう人って、そういうのに弱いのかも…」
顎に指を当てながら、松本は考え込んでる。
「どっか…違う場所、探しとくから…それまで我慢できる…?」
「えっ…でも…」
「ここに来るお姉さん、一人暮らしの人もいるし…頼めば置いてくれるかもしれないから…今度聞いて見るからさ」