第5章 朔
「いやー?珍しく潤が、俺のなんて言うから…」
「や。え、まあ…な?」
だから俺を見るな。
「智は潤が他の女とヤっててもいいんだ?」
「えっ…あ、はい…まあ…」
「へえ…」
きらりと和也さんの目が光った。
「お…俺はっ…潤だけなんでっ…」
「そ、そう!俺も!男は智だけなんで!」
そう言って、がばっと抱き合ってみた。
「ふうん…?」
和也さんはずっと疑わしそうな目で俺たちを見ている。
ど…どうしよう…
「ま、別にいいけど…」
そう言ってまた寝室に戻っていった。
しばらく俺と松本は抱き合ったままで、硬直していた。
「ばっ…ちょっ…」
「あ、ああ…」
慌てて離れたけど…
「アレ…まずいかも…」
「え…?」
「嘘だって、バレたかも…」
「えっ…」
そんなに俺、へたくそだったかなあ…
「今度ふたりきりになったら、おまえヤられっかも…」
「えっ…ええええ!?」
「…どうする…?」
「え?」
「拒んだら…追い出されるかもよ…?」
「…そんな…」
松本はしばらくジュースを飲んで黙っていたが、不意に俺に顔を向けた。
「どっか…他に行く宛、ないの?」
「…ないよ…」
「だよなあ…」