第5章 朔
目が覚めたら、寝室には俺しか居なくて。
リビングに行ったら、制服姿の松本が来てた。
ソファに座ってテレビを見ていた。
「あ…松本…」
「あ、大野!」
にっこり笑って、パタパタと俺の方に走ってきた。
「な…大丈夫だった…?」
「え?なにが…」
じっと俺の顔を見て、松本はほっとしたようだった。
「手、出されなかったんだな?」
「あ、うん…抱きまくらしただけ…」
「良かったぁ…アレが効いたんだな…」
「え?アレってなに」
「お前は俺のだって言っておいたから…」
「あ…あれ、冗談じゃなかったの!?」
「しー!声がでかい」
慌てて周りを見渡したけど、和也さんは居なかった。
バスルームから音が聞こえてくるから、風呂に入ってるらしい。
「…いや、そういうことにしといたら、手出さないかなと思って…」
「ああ…そ、そうなんだ…」
「あの人、男も女もどっちもイケるんだけど…どっちかってと、男のほうが好きなんだよね…」
「え…おまえも…?」
「俺、無理。女専用」
「あ、そ」
「まあ、一回掘られたけどね!」
にっこり笑っていうから、力が抜けた…
「いてーのいたくねーのってさぁ…って、聞いてる?大野」
「あー。はいはい。聞いてる…」