第5章 朔
寝室にドカドカと歩いていく和也さんの後ろにくっついて、寝室に入った。
ここは許可なく入れない場所だから、掃除はしていない。
スタンドライトをつけた室内のベッドの向こう側に、和也さんが使ってる充電器があって。
ベッドに乗っかってそれを取ると、ぽいっと俺に向かって投げてくれた。
「ありがとうございます」
早速リビングに戻ろうとしたら…
「おい、智」
「はい?」
振り向いたら、和也さんがベッドに乗っかってる今朝俺が借りた服を掴んでた。
「これ、おまえにやる」
「えっ…でも…」
「母屋に行くときは、多少きれいなカッコしないとうるせーんだ。だから、これやる」
「あ…はい…」
きれいめな服なんて…そりゃ持ってこれなかった。
自分の部屋にあるものを手当たり次第に詰め込んできたから、そんな服を選んでる余裕もなくて…
和也さんが差し出す服を受け取ったら、いきなり手首を掴まれた。
「わっ…」
そのまま引っ張られて、どすんとベッドに寝転がって。
和也さんはぎゅうっと俺のこと抱きしめてきた。
「か、和也さん…?」
和也さんは何も答えず、そのまま目を閉じた。
あ…
抱きまくらか…
そう思って、持っていた荷物を床の上に落とすと、自分も目を閉じて、寝る態勢に入った。