第5章 朔
side O
それから、なんだか和也さんはずっと機嫌が悪かった。
でも別に怒ってるような感じでもなく。
ただ、喋らなかった。
勝手に掃除したから、機嫌悪いのかなあ…?
俺、ここを出たら行くところなんてないし。
和也さんが嫌だっていうのなら、掃除やめたほうが良いのかな。
そう思ってじっとソファに座ってたけど、別にやることもなくて…
和也さんは今日は来る人来る人、全員追い返して。
夜になるけど、部屋には誰も来ていない。
ずっと一人で、ゲームをしてる。
俺はその画面をじっとソファに座ってみている。
スマホでも見ようかと思ったら、充電が切れてた。
バタバタしてたから、充電するのも忘れてた。
「あの…和也さん」
「あ?」
テレビ画面に目を向けたまま、返事だけはしてくれた。
「スマホの充電器、借りてもいいですか?」
「ああ…使えよそんなもん」
「ありがとうございます」
「んあー死んだ」
どうやら、ゲームのキャラが死んでしまったらしく、和也さんはコントローラを放り投げた。
「あ、ごめんなさい…」
まったっくよーって言いながら、和也さんは立ち上がった。
「こっち。寝室のやつ使え」
「あ、すいません…」