• テキストサイズ

裸の月【気象系BL】

第4章 雨月


「俺…大野の家がおかしいことは知ってて…あ、もちろん本人が言ったわけじゃなくて、勝手に想像してたことなんだけど…」
「…そうか…」

仁科も感づいていた…それだけ、大野のこと見てたってことか…

「大野…言わないんだよね…」
「え?」

仁科は顔だけ窓の方に向けて、外を眺めた。

「言えないんだろうなっていうのはわかってたんだけど…何度か話しやすいように、つっついてみたんだけどさ。言わないの。絶対」
「まあ…そうだろうな…」
「…とっくに親に捨てられてたのに、認めらんなかったんだと思う」

ずばりと、こんな少年の口から出てくるとは思わなくて。
まさにそれは俺も思っていたことで。
核心を突いている。
ベテランのスクールカウンセラーのように、するりと答えを導き出した。

「俺も、同じ経験をしたからわかる」
「え…?」

仁科は、窓の外を見たまま微笑んだ。

「俺の保護者の連絡先、弁護士でしょ?」
「あ、ああ…」
「わかるでしょ?それ…親が俺の親の役割したくないってことだから…」

そう言って、俺の顔を見た。
その瞳には、親を責めるとか…怒りとか、捻くれたものとか…一切なくて。

ただ、その事実を…静かに受け入れてるって目だった。

/ 330ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp