第4章 雨月
「ほら!やっぱり教頭に言ってないんだ!」
仁科の顔がぱああっと明るくなった。
「な、なんだ…?」
「先生!俺、誰にも言わないから!だから、大野のこと一緒に探させて!?」
「えっ…」
「ねっ?良いでしょ?先生たちより、大野が居そうなとこ、俺のほうがわかるよ?」
「そ、そりゃそうだけど…」
「詳しい事情も聞かないから!見つかったら本人から聞くから…だから、探すんだったら、俺も手伝わせて!お願いっ…」
パンと手を顔の前で合わせて、頭を下げた。
拝まれるような形になって、呆然とした。
「な…なんでそんなに…」
「だって…体育祭の看板、大野が居ないとできないよ!」
「は…?」
そんな…理由…?
ポカーンとしてたら、相葉先生が笑い出した。
「ぶぶぶぶ…ちょっと…翔ちゃん、なに真に受けてるのさ…」
「え…?へ…?」
こつんと仁科の頭を叩いた。
「ちゃんと素直に言いなさい。櫻井先生には、ちゃんと言わないと伝わらないんだから」
「えー…」
「人によって、言葉の伝わり方は違うの。櫻井先生には素直な言葉が一番通じるの。だからきちんと言いなさい」
「はーい…」
ぽりぽりと頭を掻いて。
それから、俺に向き直った。