第4章 雨月
「翔ちゃん…どうしたの…?」
「先生?」
言えなくて。
俺が、大野になにを言ってしまったのか…
「俺がいけないんです…俺が…」
世界を放浪していた時、命の危険を感じたことはあった。
スラム街に迷い込んで強盗にあったこともある。
でも…あんな、闇の深い部屋…
あんなの、初めてだった。
あんな…訳のわからない恐怖
「信じてやれなかった俺が…」
涙が出そうになる。
でも、今泣きたいのは大野だ…
今、もしかして宛もなく彷徨っているかも知れない。
探し出さなきゃいけない…
早く、あいつを…
「翔ちゃん…どういうことなの…?」
「そうだよ、先生…」
「い、いや。これは大野のプライベートなことだから…仁科は大野が戻るまで待っててくれ、な?」
「ふうん…?」
きょろっと丸い目を俺から逸して、相葉先生を見た。
「ん?なに?」
「…ぼくぅ…言っちゃおうかなあ…教頭先生にぃ…」
相葉先生も目を丸くした。
くるっと仁科は俺の顔を見た。
「大野の家が、機能不全で大野が家出したってぇ~」
「は…?何いってんだ…?」
思わず、乱暴な言葉が飛び出してしまう。
怒りが徐々にこみ上げてきて、思わず拳を握りしめる。