第4章 雨月
「ふうん…翔ちゃんの熱血指導に、感化されたってわけ?」
「ね、熱血指導なんてしてないっすよ…」
「ぶっ…」
くくく…と笑って、相葉先生はマグカップをテーブルに置いた。
「そっか…五関くんがねえ…」
しばらく五関は保健室登校していたから、相葉先生とは顔なじみになっているはずで。
「どうも五関に反撃されて、あいつら頭に来たらしいんですよ…で、止めに入った仁科に八つ当たりで、罪をなすりつけようと、突然喧嘩を吹っかけられたって嘘をついたようで…」
「ははあ…中島先生、大変だ…」
「ええ…なんかもう擁護する気力もないみたいでしたよ…」
「そうだろうね」
以前は成績優秀であったことやその他諸々…教頭決裁で、処分は出なかった。
五関とその両親は、クラスを離してくれたらいいということで、次年度にクラス替えということで最終的に話はついたんだ。
「なんか…意外だったな…カズヤも五関くんも…」
「そっすね…」
担任がこんなこと言ったらだめなのかもだけど…
仁科がいじめを止めようとするなんて…本当に意外すぎて…
「大野くん…」
「え?」
「カズヤがかっこいいって…だから自分もやってみようって、そう言ってたでしょ?」
「ああ…はい…」
そうだ…大野も、いじめを止めるなんて…意外すぎてびっくりした。
「ちゃんと学校来てる?」
「…いえ、それが…」
「そうなの!?額の怪我、した甲斐がないじゃん!」
「や…それは別に…」
額のこと忘れてた…
そう言われたら、ズキズキしだした。
ちくしょー…
「じゃあ、本格的に甲状腺検査とか病院紹介しようか?」
「いえ、違うんです」
「え?」
「その…大野、家出したんで…」
「え…?」
「今日、大野が来ないから、教頭に許可をもらって、午前中…家庭訪問したんです…」