第4章 雨月
そうは言われたけど…
結局、部屋は掃除するところがいっぱいあって。
休みながらだったけど、ちょこちょこと目立つところから、掃除してしまった。
和也さんが大学で授業受けて帰ってくるころには、まだ俺はバタバタと掃除してた。
「智…なにしてんの…」
床を雑巾で拭くのに夢中になってて、帰ってきたことに気づかなくて、びっくりした。
「お、おかえりなさい…」
狭い玄関で靴を脱いで入ってきた和也さんは、呆れてた。
後ろには大学の友だちが居て、床を拭いている俺を見て笑ってる。
「なに…新しいメイド?」
「ちげーわ…」
「な、なに怒ってんだよ…」
ムッとしてる和也さんに、お友達は少しビビってる。
「帰れよ」
「えっ…でも…」
「いいから帰れよっ…」
和也さんは、お友達を追い出してしまった。
呆然と見上げてる俺を見て、和也さんはチッと舌打ちした。
「んなの、メイドにやらせりゃいいだろ…?」
「あ…はい…」
「なんで、お前がそんなことしてんだよ?」
「…住ませて貰ってるし…」
「はあ?」
「飯も、食わせてもらってるし…」
家じゃ…母さんが暴れるから、ろくに飯なんか出てこなかったし。
外で買ってきても、取り上げられることだってあったし…
「俺、じいちゃんもばあちゃんも死んじゃって居ないし…行くところもないから…ありがたいなって思って…」
雑巾を握っている手を見たら、ふやけて白くなってた。
…やりすぎたかも…