第4章 雨月
side O
「松本…俺さ…」
そう言いかけたとき、和也さんがバスルームから出てきた。
腰にバスタオルを巻いて、ハンドタオルで髪の毛を拭きながら上がってきた。
「じゅーん…ちょっと、そこのゴミ、捨てといてくんね?」
「はーい!大野も手伝ってよ!」
「あ、うん…」
アイランドキッチンの棚から、ゴミ袋を取ってきて。
ソファ周りのテーブルに置いてある缶やゴミを袋に詰め込んだ。
灰皿には、吸い殻と灰がてんこ盛りになってて。
灰が舞い上がって弱った…
松本が、どっかから掃除機を持ってきたから、ソファとラグの上を軽く掃除した。
途中、松本が近寄ってきて…
「…大野が一番新入りだから、ゴミとか片付けてね…?」
「あ、うん…わかった…」
家でも、やってたことだから…
このくらいなら、全然苦にもならない。
「週に一回、母屋のお手伝いさんが来るけど、間に合わないんだよね」
そう言って、松本は苦笑いした。
ある程度片付くと、スエットに着替えた和也さんが寝室から出てきた。
「ありがと。潤。ホレ…」
そう言って、ポケットからむき出しの一万円札を出してきた。
「あざーす!」
松本は躊躇することなく、それを受け取った。
「ん。智も」
そう言って、俺にも一万円を差し出してきた。
「え…でも…」
「いーから、受け取っておけって!」
松本にそう言われて、恐る恐る受け取ると、和也さんはにっこり笑った。
あ、なんか…笑顔は可愛いんだ…
「さっき、ごめんねえ…ちょっと機嫌悪くて。全然、いつまでも居てもいいからね?智」