第4章 雨月
学校長に、今日はここから同席する必要はないと言われ。
仁科は大丈夫だろうが、ケアをするよう指示が出た。
様子を見て、保護者に連絡するよう言われて、すっかりそこが抜け落ちていることに気づいた。
なんて間抜けな担任だ…
ただ…
仁科の保護者連絡先って…弁護士事務所なんだよね…
親じゃない。
だから、気が重くなった。
本当に…生徒一人ひとりに、いろんな事情があって…
闇だと思ってたその先は、落とし穴だったことに…
教師が気づいてやれるかどうか…
それが生徒の人生にどれだけの影響を与えるのか。
そう思うと、体が少し震えた。
教師は…
エスカレーターに乗っけてやるだけが、仕事じゃない。
だけど、どこまで生徒の人生に関われるのか。
関わってもいいのか、放っといてもいいのか。
答えは、出そうになかった。
保健室に行く前、ちらりと職員室の隅に、担任と話している五関を見た。
背筋がきちんと伸びて。
小さいけど、その背中は大きく見えた。
殴り返すのは、いけないことだ。
だけど、五関が勇気を持って抵抗できたことが…
正直俺には嬉しかった。
「もっと…強く、なれ。五関…」
小さく、その背中につぶやくと、職員室を後にした。