第4章 雨月
「いえ、五関が同じ事言っていまして。先程…中庭でばったり会って、そう五関のほうから言ってきました」
「ほう…」
学校長は目を細めた。
先を促すように仁科に向かって頷くと、また仁科は上を向いて、うーんと唸った。
「で…さっき…昼休み、櫻井先生に質問があったから職員室行こうとしたんですけど…階段のとこで、変な音がするから…前にも、3年の小さい先輩が殴られてた場所だから、気になって見に行ったんです。そしたら、やっぱり同じ先輩が同じ奴らに殴られてて…」
んーと上に向けた顔を戻すと、俺を見た。
「なんか、大野が前に助けてるの見て…俺も、助けてやろうかなって思って…」
「な、なんて言い草なんだ。その、助けてやろうかなって…」
教頭が揚げ足を取ると、いたずらっ子みたいに笑った。
「だって、大野かっこよかったし。それに、俺、その時あのちっこい先輩に悪いこと言っちゃったし…だから、罪滅ぼしってわけじゃないけど、止めに入ったんです」
「どうやって止めに入ったんだね?」
学校長が聞くと、仁科は包帯の巻いてある方の手を前に差し出した。
「こうやって先輩の肩を掴んで、やめなよみっともないって言っただけです。そしたら、逆に先輩たちに突き飛ばされて、挙げ句殴られて、コレっす」