第4章 雨月
そんなうちのクラスの生徒を、学校長は微笑んで見ていた。
「さあ、教室へ帰りなさい。後で話すから…な?」
「はぁい…」
ぺこりと学校長と教頭に頭を下げると、生徒たちは教室へ戻っていった。
その背中を見ていると、学校長がつぶやいた。
「仁科くんは…慕われているようですね」
「あっ?えっ?そ、うなのかな…」
まあよくサボるけど…登校してくる時は、クラスメイトと上手くやっているようには見えた。
特に、大野とは…仲が良いんだろう。
「でも学校長、仁科は…」
「よく、知っています。中等部から評判でしたからね」
教頭が文句を言いそうな口調で喋りだすと、さっと制するように言い切った。
「教頭先生、先入観はいけませんよ」
「はい…」
そのまま歩き出した。
「とりあえず、仁科くんの話を聞きましょう」
「は、はい」
保健室につくと、相葉先生が明るい笑顔で迎えてくれた。
「あらあ…大名行列みたいにゾロゾロと…」
「相葉先生!ふざけている場合じゃないんですよ!?」
教頭の剣幕に、肩を竦めて苦笑いした。
「仁科。先生たちがお見えだから、起きなさい」
ベッドのあるところのカーテンが揺れたかと思うと、中からぶすっつらをした仁科が出てきた。
手首に包帯を巻いている。