第4章 雨月
松本は、少し気まずそうな顔をして…
それからちらりと奥の方を見た。
「…俺、実は養子なんだ…」
「えっ?」
「小学生の時…今の親に貰われたっていうか、引き取られて…」
松本は中等部で同じクラスになって。
小学校は別々だから、そんな話し聞いたことなかった。
その頃から明るくて、いいヤツで。
それにモテるから、早くからセックスを覚えて大人だった。
時々学校をサボるから、教師たちには目をつけられてたけど、グレてるとかそういうんじゃないから、みんなに好かれてた。
だからまさか、そんな過去があったなんて…
想像もつかなかった。
「実の親と、ちょっと上手く行ってなかったんだよ…」
「…そっか…」
「今の親は、実の親の親戚に当たる人で…小さい頃から、子供がいないから俺のことすっごい可愛がってくれてたんだ」
前髪をかき上げると、少しだけ遠い目をした。
「で、親と上手く行ってない俺を見るに見かねて、今の親が引き取ってくれて…だからさ、わかるんだよ。家族とうまく行ってない奴のことが…」
ちらりと俺の顔見ると、申し訳無さそうに俯いた。
「顔、腫れてたじゃん…?」
「うん…」
「それに、大野…中等部の頃は、こんな暗い目してなかったし…なんか、仁科みたいだなって」
カズヤの名前が出てきて、少し驚いた。
中等部から一緒だったけど、松本と同じクラスにはなってなかったはずだし、接点がよくわからなかった。