第4章 雨月
「…びっくりした…?」
「へ…?」
振り返ると、松本が気の毒そうに俺の顔を見てる。
「ごめんね。今日は他の先輩居ないから、なんか機嫌悪いみたい。もしくは、バッドトリップかも」
「バッドトリップ?」
「うん…まあ、住んでたらわかると思う」
「え…?何…?」
「…色々勧めてくると思うけど、程々にしてね?大野」
「なにを…?」
なんかヤバいことに巻き込まれるのかな…
先生の顔が、チラついた。
凄く、心配そうな顔で俺を見てる
でも次の瞬間、あの軽蔑した目を思い出した
…どうでもいい…
俺なんかどうなっても…
松本は、ニッコリ笑うとヘッドロックを仕掛けてきた。
「オ・ン・ナ!」
「えっ…」
「手出すなら、避妊ちゃんとしろよお?」
「…ばっかじゃねえの…」
「うわ、大野童貞もう卒業してんの?」
「当たり前だろ…」
「へえ…あんまそういうの興味なさそうにしてんのに…」
そりゃ…母さんがあんなだから…
女に興味なんて、持てなくなってた。
「女なんか汚えじゃん…」
「なになに?なんか言われたの?セックスの時」
「ちげーよっ…」
「ぶーーーっ顔、赤っ…!」
「やめろよおおおおっ…」
なかなか松本のヘッドロックは硬くて、凄い苦しかった。
やっとヘッドロックを解いてもらって、冷蔵庫から勝手に飲み物を出して。
俺と松本は、ソファに座ってずっと壁に据え付けてある大きなテレビを見ながら、ここに来る先輩たちのことを聞いた。